松戸混声合唱団 Matsudo Mixed Chorus

― 演奏会 ―

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― 定期演奏会の記録 ―

1994年1月23日(日)

午後2時 開演

森のホール21・大ホール

松戸混声合唱団創立記念演奏会

ヴェルディ レクイエム

指揮:小松 一彦

管弦楽:フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団

ソプラノ:大倉由紀枝 メゾソプラノ:永井 和子

テノール:川上 洋司 バス:福島 明也

合唱:松戸混声合唱団

■合唱指揮:小濱  明

■主催:松戸混声合唱団 ■共催:(財)松戸市文化振興財団

■後援:松戸市教育委員会/松戸市音楽協会/松戸市合唱連盟/千葉県合唱連盟

プログラム・曲目紹介

G・ヴェルディ/レクイエム

  1. REQUIEM 永遠の安息を与え給え、主、あわれみ給え(入祭文) 合唱・四重唱
  2. DIES IRAE 怒りの日(続誦)
    1. Dies irae 怒りの日(続誦) 合唱
    2. Tuba mirum くすしきラッパの音 バス独唱・合唱
    3. Liber scriptus 書き記されし書物は メゾソプラノ・合唱
    4. Quid sum miser あわれなる我 メゾソプラノ・ソプラノ・テノール三重唱
    5. Rex tremendae みいつの大王 男声合唱・三重唱
    6. Recordare 思い給え メゾソプラノ・ソプラノ二重唱
    7. Ingemisco 我は嘆く テノール独唱
    8. Confutatis 判決を受けたる呪われし者は バス独唱
    9. Lacrimosa 涙の日なるかな メゾソプラノ・バス・合唱・四重唱

  1. OFFERTORIO 主イ工ズス(奉献文) 三重唱・四重唱
  2. SANCTUS 聖なるかな(三聖唱) 二重合唱
  3. AGNUS DEl 神の小羊(神羊唱) メゾソプラノ・ソプラノ二重唱・合唱
  4. LUX AETERNA 永遠の光を(聖体拝領唱) メゾソプラノ・テノール・バス三重唱
  5. LIBERA ME 我を許し給(赦祷唱) ソプラノ・合唱

ヴェルディの「レクイエム」について

「レクイエム」はローマ・カトリック教会の中心的典礼である「ミサ」のひとつで、故人の縁故者の希望により、故人の死の直後かあるいはその忌日に行う「死者のためのミサ」を言い、墓に眠っている死者の霊が、最後の審判の日に天国に救い入れられるように祈るものである。この「ミサ」の最初の章である「入祭文」の言葉が「レクイエム」からはじまるので、一般に「レクイエム」と呼ばれるが、通常のミサ曲と異なる点は「グローリア」と「クレド」が省かれ、「ディエス・イレ」が加えられる。近代以降の作品としては、モーツァルト、ケルビーニ、ベルリオーズ、ヴェルディ、ブルックナー、フォーレ、ドヴォルザークなどの作品があげられるが、特に有名なのはモーツアルト、フォーレの作品とともにヴェルディの曲があげられる。

1868年にロッシーニが没したとき、彼の弟子であったヴェルディは12人のイタリアの作曲家を糾合して、ロッシーニのために「レクイエム」を書こうと計画した。そして彼自身は最後の楽章、フーガの「リベラ・メ」を作曲した。しかし各人各様のスタイルで書いた宗教音楽が精神的にも、また手法上も統一を得ないことは明らかである。そのうえ経済的なことから中止を余儀なくされた。しかしミラノ音楽院のマッツカートはヴェルディの作曲した部分を見て、その優れた作風に感心し、是非彼ひとりで全部を書き上げるようにと手紙を書いたのであった。そこでヴェルディは幾楽章かのスケッチをしたが、ちょうどそのときオペラ「アイーダ」を作曲中で、「レクイエム」はそのままになっていた。ところが1873年5月22日にイタリアの名高い詩人で、小説家でもあったアレッサンドロ・マンゾーニが死んだことによって、ヴェルディは日頃からこの詩人を尊敬していたので、葬儀ののち数日してひそかにその墓前に立って、彼のために「レクイエム」を書くことを誓ったのである。

それから約1か年のちに出来上がったのが、ヴェルディが最初に仕上げた「リベラ・メ」を中心とした「レクイエム」である。

初演は1874年5月22日、マンゾーニの一周忌にミラノのサン・マルコ寺院でヴェルディ自身の指揮によって行われた。

ヴェルディ特有の美しい旋律に富み、多分に劇的効果を表しているこの曲に対して、ヴェルディの研究家として知られるカルロ・ガッティは「宗教的霊感によって書かれた偉大なドラマチックな絵画である」と激賞している。たとえば、第2曲「ディエス・イレ」の劇的性格は第1曲「レクイエム・エト・キリエ」の静寂で崇高な特性に顕著な対照をなしている。また第2曲「ディエス・イレ」の「妙なるラッパ」の部分が8本のトランペットで導かれるところ、全曲中最も感動的な部分で、自ら涙しながら書いたと言う「ラクリモサ」、第3曲「オフェルトリウム」、第4曲「サンクトゥス」、第5曲「アニュス・デイ」の歌劇的構成、そして神秘的な三重唱をもって表現した第6曲「ルックス・エテルナ」が、四声部の大フーガの第7曲「リベラ・メ」にいたる導入的役割をしているなど、劇的シチュエーションを計算に入れて作曲されていることは明らかである。オペラ「アイーダ」に至るまでに体験したオーケストレーションと構成力をこの作品で十分に展開させ、旋律的に独唱を、劇的に合唱を用い、単純な管弦楽法を使って、その表現力を最大に発揮している。

古典的なモーツァルトの「レクイエム」に対し、フォーレのそれが「寂滅の世界」を描く「静」であるとすれば、ヴェルディの「レクイエム」は対照的な「動」であり嵐のような感情の燃焼を展開する作品である。

(文・小濱 明)

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