― 定期演奏会の記録 ―
プログラム・曲目紹介
- Requiem(永遠の安息を) (合唱・ソプラノ独唱)
- Dies irae(怒りの日) (合唱)
- Tuba mirum(不思議なラッパの音) (ソプラノ独唱・四重唱)
- Rex tremendae(恐るべき大王) (合唱)
- Recordare(慈悲深きイエズス) (四重唱)
- Confutatis(判決を受けたのろわれた者は) (合唱)
- Lacrimosa(涙の日よ) (合唱)
- Domine Jesu(主イエズスよ) (合唱・四重唱)
- Hostias(讃美のいけにえ) (合唱)
- Sanctus(聖なるかな) (合唱)
- Benedictus(祝福された者) (四重唱・合唱)
- Agnus Dei(神の小羊) (合唱・ソプラノ独唱)
- チキ・チキ・バン・バン
- この素晴らしき世界
- ロミオとジュリエット
- シャル・ウィ・ダンス[二重唱 隠岐彩夏/市川浩平]
- 日曜はダメよ
- ニュー・シネマ・パラダイス
- 明日に架ける橋
W.A.モーツァルト作曲 「レクイエム」二短調 K.626永遠の安息を、主、あわれみ給え
アメリカ合衆国、第35代大統領になったジョン・F・ケネディが就任演説で「あなたの国が何をしてくれるかを問うのではなく、あなたが国に何が出来るかを問いかけてください。」と語った語録は歴史に残る名言である。
悲しくも暗殺された故大統領の国葬、追悼ミサがボストンの聖十字架大聖堂で執り行われ、そのミサ曲はラインスドルフ指揮ボストン交響楽団によってモーツァルトの「レクイエム」(死者のためのミサ曲)が演奏された。
「レクイエム」とは〈永遠の安息を〉、続唱キリエ〈主、あわれみ給え〉と合唱、ソプラノ・ソロによりミサ曲が展開する。
この曲はカトリック教会の儀式に由来するが、今では宗教の主義や教義などを超越した世界観でもって、壮麗で至高の音楽芸術として広く世界中に愛好され演奏されている。
作曲の動機 “灰色に身を包んだ謎の使者から”
松戸混声合唱団が前回演奏したモーツァルト「ハ短調ミサ」の作曲の動機は自らの結婚成就の祈願であったが、この「レクイエム」の作曲の動機は全く異なる。
1791年9月付、ダ・ポンテ宛て書簡によれば、『頭は朦朧とし、気力も尽き果てて、目の前から例の “見知らぬ男”の姿を追い払うことができません。ぼくに懇願し、急ぎたて、性急に仕事を要求する男が絶えず見えるのです。作曲しているほうが休息しているときよりも疲れないので、仕事を続けています。ふと最後の鐘が鳴っているなと感じることがあり、まさに息も絶えだえです。僕の才能を楽しむ前に、終わりが来てしまったのです。誰も自分の一生を計れる者はなく、諦めなくてはなりません。これは“僕の葬いの歌”です。未完のまま遺すわけにいかないのです。』
“見知らぬ男”とは伝説「灰色に身を包んだ謎の使者から、名も告げぬ依頼主のため「レクイエム」を委嘱され、その姿が黄泉の国の使者を彷彿とさせた」逸話である。
“僕の葬いの歌”とは「レクイエム」を意味している。結局、モーツァルトはこの遺作を完成させることはなかった。
モーツァルト死因の謎は続く
病床についてもモーツァルトは「レクイエム」の作曲に没頭したが、1791年12月5日に臨終を迎えた。35歳であった。聖シュテファン大聖堂の死者名簿に死因は急性粟粒疹熱と記載されている。
にも拘らずモーツァルトは誰かによって毒殺されたという説が登場してくる。
ロシアの文豪プーシキンは戯曲『モーツァルトとサリエリ』(1830年公刊)で《モーツァルトのコップに毒薬を投じるサリエリ》の挿絵、黒い服を着た謎の男から「レクイエム」の作曲を依頼された会話、さあ、飲めよ(挿絵のシーン)。
天才へ嫉妬するサリエリのモーツァルト毒殺説が以後定着してしまった。
1984年、映画「アマデウス」で死の床についたモーツァルトが「レクイエム」の章「コンフターチス」の旋律を口述でサリエリに五線記譜させる劇的なシーンは感動の場面である。サリエリの人物像は友情に塗り替えられたのだ。
「レクイエム」未完の遺作の運命
未完のままのモーツァルト遺作「レクイエム」は《Requiem(レクイエム)、Dies irae(怒りの日)、Tuba mirum(不思議なラッパの音)、Rex tremendae(恐るべき大王)、Recordare(慈悲深きイエズス)、Confutatis(判決を受けたのろわれた者は)までの各楽章のそれぞれ始めから終わりまで》と、《Lacrimosa(涙の日よ)の8小節まで》、《Domine Jesu(主イエズスよ)、Hostias(讃美のいけにえ)の各楽章の音楽の骨組だけ》は完全にモーツァルトによってつくられている。(松戸混声合唱団演奏楽譜序文より)
夫に先立たれたコンスタンツェは、依頼主からすでに報酬の半分を受け取っていることもあり、契約を忠実に果たして残額を手に入れることを家計上強く望んでいたのだ。
未完で残された自筆稿をもとに、誰かに仕上げさせ、モーツァルト自身が「レクイエム」をすべて完成していたものとして発注者に手渡そうと考えた。
コンスタンツェが白羽の矢を立てたのはアイブラーであったが、なぜか彼はこの仕事を中断してしまった。その後、この仕事を改めて依頼され、承諾し、かつ完成したのはジュースマイヤーであった。彼はモーツァルトの生前に、「レクイエム」の作曲進行の現場に立ち会っていたのだ。
1792年3月初め頃に全曲の補筆完成が終了したものと思われる。(書簡全集より)
その後、補筆の卑劣さが指摘されるようになり、さまざまな論議が沸騰し、つい最近までもつれ込んでいたという。
懐かしの映画音楽
チキ・チキ・バン・バン
- 映画:チキ・チキ・バン・バン(1968年 イギリス)
- 作曲:リチャード・シャーマン/ロバート・シャーマン
ディズニーの楽しい、自動車が空を飛ぶという童話映画です。この映画の原作者は、何あろう実はイアン・フレミングなんです。イギリスのスパイ、ジェームズ・ボンドで有名な映画007シリーズ。かっこよくて、グラマーな女性にもてているジェームズ・ボンドと、子供たちの夢のチキチキバンバン、同じ原作者が生み出すストーリー、この落差は面白いものです。作詞作曲は、メリー・ポピンズでアカデミー作曲賞と歌曲賞を取ったシャーマン兄弟です。
この素晴らしき世界
- 映画:グッドモーニング, ベトナム( 1987年 アメリカ)
- 作曲:G・ダグラス/ジョージ・デヴィッド・ワイス
映画はロビン・ウィリアムズがベトナム前線基地での放送を担当する兵隊を演じ、比較的新しい作品なのでサッチモ(ルイ・アームストロング)とは年代的に離れているし、ややイメージ的には違う感じもしますが歌自体は1967年、まさにベトナム戦争たけなわの時代でサッチモがなくなる数年前の曲です。平和への願望でしょうか、それを20年後の映画のテーマにしています。稀代のジャズ・トランぺッター、ルイ・アームストロングがその独特の渋い声でうたっています。
ロミオとジュリエット
- 映画:ロミオとジュリエット(1968年 イギリス・イタリア)
- 作曲:ニーノ・ロータ
皆様もご存知、シェークスピアの作品の中でもとりわけ有名な作品です。ヒロイン、ジュリエットをオリビア・ハッセー、当時15歳が恋に悩むいたいけな少女の役を演じました。後に布施明と結婚して一児をもうけるとは! いいなぁ〜♪と羨ましく思ったものです。作曲は、ゴッドファーザーでも有名なニーノ・ロータ。この曲は、歌詞が2種類あり、What is the youthとA time for usから始まる曲があります。今回は後者のバージョンを歌います。男声は若いイケメンのロミオを、女声はオリビア・ハッセーの如く純情、可憐に歌うように頑張ります。
シャル・ウィ・ダンス
- 映画:王様と私(1956年 アメリカ)
- 作曲:リチャード・ロジャース&オスカー・ハマーシュタイン
この題名からすると役所広司と草刈民代、またはそのカバーでアメリカのリチャード・ギアの映画をイメージしますが、実は古い映画で、ユル・ブリンナーとデボラ・カーが名演しています。作曲はロジャース&ハマーシュタインの名コンビで、サウンド・オブ・ミュージック等の素晴らしいミュージカルを生み出し数々の賞を取っています。この曲のみ合唱団ではなくソリストのソプラノ隠岐彩夏さんとテノール市川浩平さんです。素晴らしいデュエットをお楽しみください。
日曜はダメよ
- 映画:日曜はダメよ(1960年 ギリシャ)
- 作曲:マノス・ハジダキス
ギリシャの港ピレウスの明るくて自由な娼婦と真面目一徹なアメリカ人旅行者のコメディタッチの映画です。ちょっとセクシーですが、ブズキの軽快な音が映画のテーマとなって独特の雰囲気を醸し出しています。今回の演奏会では、港にいる若者が女性に軽く声をかける様子を男声が、そして娼婦のような艶めかしいため息を女声が演じています。はたしてどのような声で歌うのでしょうか!?
ニュー・シネマ・パラダイス
- 映画:ニュー・シネマ・パラダイス(1988年 イタリア・フランス)
- 作曲:エンニオ・モリコーネ
映画の題名からはハリウッド映画を連想させますが、内容はイタリア・シシリー島を舞台にした伊仏の共同制作。日本と同じ第二次世界大戦後の貧乏な時代を背景に映画が大好きな少年トトと撮影技師のアルフレードの友情・・・というより厚い信頼関係といった方が日本人にはピンときますでしょうか? お国柄、底抜けに明るくて、心の奥に隠した郷愁、懐かしい思い、そして最後はホロっと涙が頬をつたうように、心が優しくなる映画です。映画のそこここに、この美しいテーマ曲が出てきます。皆様の心に染み入るように歌いたいと思います。
明日に架ける橋
- ポール・サイモン(1969年 アメリカ)
サイモンとガーファンクル、戦後の団塊の世代に近い方はほとんどご存知、ビートルズにならび有名ですね。アルバムの中でもとりわけ有名なのがこの曲。僕はいつも君のそばにいて見守っているよ、君のためならどんなことでも身を投げ出すよ・・・といった素晴らしい内容です。巷間、色々といじめがニュースとなっていますが、そんな悲しい世相を吹き飛ばしてくれるような心が温まる明るい曲です。この曲のみ映画のテーマ音楽ではないんですが、演奏会のフィナーレにふさわしく元気に明るく歌うよう頑張ります。