― 定期演奏会の記録 ―
プログラム・曲目紹介
〈※グレーの曲目を除外して演奏〉
第1部 歓呼せよ、よろこび躍れ(降誕節第1祝日用)
- 合唱 歓呼せよ、よろこび躍れ
- レチタティーヴォ そのころ全世界の人口を調査せよと(福音史家)
- レチタティーヴォ いまやわが最愛の花婿は(アルト)
- アリア 備えよ、シオンよ(アルト)
- コラール いかにして汝を迎えん(合唱)
- レチタティーヴォ そしてマリアは初子を(福音史家)
- コラールとレチタティーヴォ 彼は貧しきものとして(合唱・ソプラノとバス)
- アリア 偉大なる救い主よ、強き主よ(バス)
- コラール ああ、わが心より愛する幼児イエスよ(合唱)
第2部 さてこの地方で羊飼いたちが(降誕節第2祝日用)
- シンフォニー
- レチタティーヴォ このあたりに羊飼いおりて(福音史家)
- コラール 輝き出よ、おお美しき朝の光よ(合唱)
- レチタティーヴォ み使はいった(テノール)
- レチタティーヴォ 神はアブラハムに(バス)
- アリア よろこべ羊飼いたちよ(テノール)
- レチタティーヴォ 幼児が布にくるまれて飼い葉桶の中に(福音史家)
- コラール 見よ、暗きうまやに横たわり(合唱)
- レチタティーヴォ さらば行け羊飼いたちよ(バス)
- アリア 眠れよわが愛しきもの(アルト)
- レチタティーヴォ するとたちまちおびただしい天の軍勢が(福音史家)
- 合唱 いと高さところで神に栄光があるように
- レチタティーヴォ さらばみ使いたちよ(バス)
- コラール われらは汝の軍勢とともに歌う(合唱)
第3部 天の統治者よ(降誕節第3祝日用)
- 合唱 天の統治者よ舌足らずの歌を聞きたまえ
- レチタティーヴォ み使いたちが彼らを(福音史家)
- 合唱 さあ、ベツレヘムへ行って
- レチタティーヴォ 主はその民を慰め(バス)
- コラール 主はすべてをわれらのためになし(合唱)
- 二重唱 主よ汝の同情とあわれみが(ソプラノ・バス)
- レチタティーヴォ そして羊飼いたちは(福音史家)
- アリア わが心よ、この聖なる奇蹟を(アルト)
- レチタティーヴォ しかり、わが心は必ずや(アルト)
- コラール われ汝をけんめいに守らん(合唱)
- レチタティーヴォ 羊飼いたちは再び(福音史家)
- コラール よろこべわれらの救いの主が(合唱)
- ダ・カーポ(反復) 天の統治者よ(24曲へくりかえし)
第4部 感謝と賛美をもってへりくだれ キリストの割礼と命名記念日用
- 合唱 感謝と賛美をもってへりくだれ
- レチタティーヴォ 8日が過ぎ(福音史家)
- レチタティーヴォとコラール インマヌ工ル、おおやさしきことよ(バス・合唱)
- アリア わが救い主よ汝がみ名は(ソプラノ)
- レチタティーヴォとコラール いざや汝のみ名のみが(バス・合唱)
- アリア われ、主のためにのみ生きん(テノール)
- コラール イエス、わが行いを正したまえ(合唱)
第5部 神に栄光を 汝にあれと歌われよ(新年第1日躍日用)
- 合唱 神に栄光を 汝にあれと歌われよ
- レチタティーヴォ イエスがヘロテ王の代に(福音史家)
- 合唱とレチタティーヴォ ユダヤ人の王として
- コラール 汝の輝きにすべての闇は消え(合唱)
- アリア またわが暗き思いを照らしたまえ(バス)
- レチタティーヴォ ヘロテ王これを聞きて(福音史家)
- レチタティーヴォ 何ゆえに汝らは怖がるや(アルト)
- レチタティーヴォ そこで王は(福音史家)
- 三重唱 ああその時は(ソプラノ・テノール・アルト)
- レチタティーヴォ わが最愛の人は(アルト)
- コラール かかる心の部屋は(合唱)
第6部 主よ、おごれる悪魔いきまくとき(顕現節用)
- 合唱 主よおごれる悪魔いきまくとき、われは
- レチタティーヴォ そこでへロテは(福音史家・バス)
- レチタティーヴォ 汝、偽りの人は(ソプラノ)
- アリア 彼の手のひとふリが(ソプラノ)
- レチタティーヴォ 彼ら王の言葉を聞きて(福音史家)
- コラール われは汝が飼い葉桶の傍らに立つ(合唱)
- レチタティーヴォ ここに神、夢にてヘロテのところに(福音史家)
- レチタティーヴォ さらば行けよ!(テノール)
- アリア おごれる悪魔おびやかすとも(テノール)
- 4声のレチタティーヴォ いまや地獄の何をか怖れん
(ソプラノ・アルト・テノール・バス) - コラール いまやすべては報われて(合唱)
曲目解説 J.S.バッハ「クリスマスオラトリオ」
「いざ祝え、この良き日を!」――印象的な太鼓の音と管楽器のファンファーレに彩られた高らかな合唱に乗って、クリスマスオラトリオは幕を開ける。キリスト生誕の歓びを明るく祝祭的に表すこの長大なオラトリオは、J・S・バッハの残した3つのオラトリオ(他に「復活祭オラトリオ」「昇天祭オラトリオ」が作曲されている。)の中で最も規模が大きく、彼の後半生にあける宗教音楽の傑作の一つに数えられている。
クリスマスオラトリオが作曲された1734年当時、バッハはライプツィヒの音楽監督とその傘下にある四大教会の一つ聖トーマス教会の楽長(カントール)を兼任し、作曲に、演奏に、音楽教育にと、多方面で活躍し多忙を極めていた。その激務の中にあって、バッハの作曲は常に実務と隣接し連動した形で行われていた。バッハは暦の上の無数の宗教的な記念日のために、多いときには週に一曲という驚異的なぺースで教会カンタータを作曲し、教会に提供するとともに自ら演奏にも携わったのである。こうしてこのライプツィヒにおいて、彼の作品群の中核を成す膨大な教会カンタータ群が生み出されてゆくのだが、ここで忘れてならないのは、バッハの教会音楽には必ず教会での実際の礼拝が念頭にあったということである。
そして、クリスマスオラトリオもそれらの音楽と同じ系列に属している。6部構成、全64曲から成るこのオラトリオは、各部がそれぞれクリスマスにまつわる別々の日の礼拝のために書かれており、事実上6つの教会カンタータと解すことも出来る。また、歌われる詩にも全体を貫く単一の物語は存在せず、本来各々の日の礼拝の中で演奏されるものという意味合いが強い。しかし音楽的に見れば、オラトリオ各部は密接に絡み合い、疑いなく統一感あふれる大きなカンタータ・ツィクルスを形作っているのである。
さて、オラトリオの前半部分、第1部から第3部はそれぞれ12月25日から27日のクリスマス3か日のために書かれている。ヨセフの妻マリアがベツレヘムの地で奇蹟の御子を出産し、その降誕の報を聞いた羊飼いたちが御子のもとを訪れて神の奇蹟を目の当りにする情景が描かれる。詩は主に新約聖書のルカ伝第2章に基づいており、御子の生誕を羊飼いのエピソードを通して語る素朴な歓びと感動に満ちている。(本日は第1部から第3部を全曲演奏する。)
第4部は、1月1日、イエスの命名と洗礼の日(元旦割礼節)にちなんでいる。ここではイエスと名付けられた救いの主の大切さがやや瞑想的な詩の中に滔々と歌われて行く。内心にイエスを賛え、愛し、感謝する信仰告白の章である。(第4部からはアリア「われ主のためにのみ生きん」を抜粋して演奏する。)
第5部は新年初めの日曜日のために、締めくくりとなる第6部は東方三博士の逸話にちなんだ1月6日の祝日(顕現節)のために書かれている。詩はマタイ伝第2章に基づいており、東方三博士か奇蹟の御子を求めてエルサレムを来訪し、飼い葉桶の中に眠る幼子イエスと対面を果たす場面が描かれる。そして、全体の結びとして、第1部最初のコラール「いかにして汝を迎えん」の旋律が第6部の終曲「いまやすべては報われて」に再び用いられ、オラトリオを回顧しつつ締めくくるのである。
(第5部からは合唱「神に栄光を」、第6部からはコラール「われは汝が飼い葉桶の傍らに立つ」「いまやすべては報われて」をそれぞれ抜粋して演奏する。)